国家によるメディアの検閲が正当化され、表現の自由が奪われた世界で本を守ろうとする人々を描いた『図書館戦争』。主人公の笠原の図書隊としての成長や恋愛模様を描いた作品です。本記事では『図書館戦争』の感想や考察を解説します。
※ネタバレを含みますので、未視聴でネタバレを避けたい方はご注意ください。
『図書館戦争』の基本情報
『図書館戦争』はベストセラー作家である有川浩氏の同名小説を映画化した2013年公開の作品です。
『GANTZ』を手がけた佐藤信介監督がメガホンをとり、本格的なアクションが話題を呼びました。脚本は『空飛ぶ広報室』や『逃げるは恥だが役に立つ』などの代表作で知られる野木亜紀子氏です。
また、本作はキャストが原作のイメージにぴったりなことでも話題となった映画です。原作ものの実写映画では、原作ファンの中である程度キャラクターのイメージが固まっており、映画のキャストがイメージと合わないといわれることもあります。
本作では原作のイメージに近いキャストが演じたこともあり、原作ファンからも人気を集めました。
『図書館戦争』のあらすじ
舞台は、国家によるあらゆるメディアの検閲を認める「メディア良化法」が施行され、30年の時が過ぎた架空の日本。図書館では良書を守るために独自の自衛組織「図書隊」を結成しました。
主人公の笠原郁は、学生の頃に助けてくれた図書隊員に憧れて関東図書隊に入隊。ある日、笠原は女性初の図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)に配属され、上官の堂上篤による厳しい指導を受ける日々を過ごしていました。仲間たちと共に任務に励む中、笠原は憧れの人とは正反対のはずの堂上へ惹かれていきます。
そんな中、良化法制定に関わる重要な資料を持つ人物が亡くなり、笠原の所属する関東第一図書館に資料が譲渡されることに。検閲を行う「良化隊」が資料を奪おうとするのに備え、図書特殊部隊が資料の回収任務へ派遣されることになります。
『図書館戦争』の登場人物
『図書館戦争』の主な登場人物は以下の通り(括弧内は演者)です。
堂上篤 (岡田准一) |
笠原の上官。指導が厳しいことから「鬼教官」と呼ばれている。 |
笠原郁 (榮倉奈々) |
高校生の頃に助けてくれた”王子様”に憧れて入隊。女性隊員として初の図書特殊部隊へ配属される。 |
小牧幹久 (田中圭) |
堂上の同僚。笠原の”王子様”の正体を知っている。 |
手塚光 (福士蒼汰) |
笠原と同じ図書特殊部隊堂上班に所属。完璧主義で入隊直後は業務や訓練で後れをとる笠原のことをよく思っていなかった。 |
芝崎麻子 (栗山千明) |
笠原のルームメイトで親友。美人で頭が良く、表向きは人当たりが良いが実際は負けず嫌いで勝ち気な性格。情報収集が得意。 |
『図書館戦争』の感想・考察
ここからは『図書館戦争』の感想・考察を解説します。ネタバレを含むのでご注意ください。
本格的なアクション
映画『図書館戦争』の魅力を語るうえで外せないのが、本格的なアクションです!
良化隊と図書隊との戦闘シーンでは迫力ある銃撃戦が繰り広げられ、発砲音数は5,000発以上にものぼります。本格的なガンアクションと緊迫感のある戦闘には、引き込まれずにいられません。
接近戦では、特に主演の岡田准一さんのアクションが圧倒的です。カリや修斗などのさまざまな武道を身につけており、それらの武術を存分に活かしたアクションは見応えがあります。
コミカルな恋愛模様
笠原と堂上の凸凹コンビのコミカルな恋愛模様も本作の魅力です。
いつも笠原に対して当たりが強く仏頂面な堂上は、笠原にとって”王子様”と正反対な存在でした。そんな堂上に対して、負けん気の強い笠原は口論の際に”チビ”呼ばわりすることもあります。
検閲中の書店に笠原が乗り込んだ際には、堂上が憧れの人を”バカ”と言ったことに対し「私の王子様をバカにしないで!」と反論する場面も。
しかし、実は”王子様”は堂上であり、笠原は憧れている張本人に対して反抗的な態度をとっていたのです。堂上本人はそのことが分かっており、笠原に対してあえて冷たく接していました。
そんな二人のすれ違いがテンポの良い会話でコミカルに描かれています。さらに、芝崎や手塚、小牧などとの軽快な会話ではクスッと笑えるシーンがちりばめられているのも魅力です。
シリアスな場面とコミカルなシーンのバランスがよく、ストーリーがテンポ良く展開されます。表現の自由という社会的意義の大きいテーマを扱っていながら、映画としての面白さも兼ね備えています。
「図書館の自由に関する宣言」
『図書館戦争』では、検閲に対抗する根拠として「図書館の自由に関する宣言」を掲げています。これは実際に日本図書館協会が定めているもので、以下の4つの条項が定められています。
第1 図書館は資料収集の自由を有する
第2 図書館は資料提供の自由を有する
第3 図書館は利用者の秘密を守る
第4 図書館はすべての検閲に反対する
引用:日本図書館協会|図書館の自由に関する宣言
この宣言を元に「図書館の自由法」が制定されており、図書隊の根拠ともなっています。図書隊はこの宣言の理念を守るために活動しているのです。
良化隊の検閲は流通している書籍だけではなく、図書館が保有しているものも検閲対象であり、劇中では度々図書館へ良化隊が検閲に訪れます。
さらに、作中では少年が殺人事件を起こしたというニュースが描かれます。その少年は読んでいた本の影響を受けたとして、図書館には犯罪を犯した少年が読んでいた本の回収や、図書館での貸し出し記録の開示が要求されるのです。
図書館は宣言の理念のもと、こうした検閲や情報の開示を拒否します。図書隊設立の立役者である仁科司令官や図書隊員たちの毅然とした姿は、図書館の自由を守るという強い思いが感じられます。
「表現の自由」を守るということ
国によるメディアの検閲は「表現の自由」を脅かす行為であり、現代日本では法律によって表現の自由が保障されています。
しかし、『図書館戦争』の作中では、表現の自由をもとに溢れる”公序良俗を乱す”表現を規制するために、メディア良化法が設立されました。あらゆるメディアが監視されて本の検閲や報道規制が行われ、図書館が図書隊を構成して対抗している一方、検閲を指示する賛成団体もいます。
現代では、表現の自由のもとで誰もが自分の考えをさまざまな形で発信できます。しかし、時には発信した内容が世間からバッシングされることも少なくありません。中には、言葉狩りや発言を押さえ込むような動きが生まれることもあります。
表現の自由は簡単に脅かされてしまうものであり、一人一人が関心を寄せなくなれば『図書館戦争』の世界のように表現の自由がなくなってしまうでしょう。
そうならないために、自分達には何ができるのか。本作は、表現の自由を守ることの大切さを感じられるとともに、守ることの難しさも考えさせられる作品です。
『図書館戦争』が見られる配信サービスは?
『図書館戦争』は以下の配信サービスで視聴できます。
サービス名 | 配信状況 | 料金(月額・税込) | 無料トライアル期間 |
Amazonプライムビデオ | 見放題配信 | 600円 | 30日間 |
U-NEXT | 見放題配信 | 2,189円 | 31日間 |
Hulu | 見放題配信 | 1,026円 | なし |
Netflix | 見放題配信 | 790円〜 | なし |
TSUTAYA DISCAS | レンタル配信 | 1,026円〜 | 初回30日間 |
ABEMAプレミアム | レンタル配信 | 960円 | 14日間 |
TELASA | レンタル配信 | 618円〜 | 14日間 |
Huluではシリーズの第2作『図書館戦争 THE LAST MISSION』や単発ドラマの『図書館戦争 ブック・オブ・メモリーズ』、映画2作目の『図書館戦争 THE LAST MISSION』も視聴できます。
アニメ版も配信されているので、実写版とアニメ版で見比べてみるのもオススメです!
まとめ
本記事では『図書館戦争』をご紹介しました。エンタメとしての面白さを持ちながら、表現の自由の大切さを伝えてくれる作品です。アクションシーンも迫力があり、テンポの良いストーリー展開に引き込まれます。
『図書館戦争』は各種配信サービスでの視聴が可能です。続編の単発ドラマや映画などもあわせて、ぜひ見てみてください!